戦後フランスの住宅と移民の話。

フランス社会・街並み・建築
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さて、昨日の続きで
フランスで使い続けられる建物と
別な運命を辿っている建物の話を少し。

Le Carreau du Temple のように
パリで大規模リノベされている建物は、
第二次大戦後の復興期に建てられたものではなく
もっと古い時代の建築
(1800年代のオスマン建築等)が多いようです。

フランスでは第2次大戦後の1960年代、
戦後復興でどんどん新しい建物が作られ
中産階級の人たちはパリ郊外の新しい家に
住むようになりました。
しかしそれらの住宅は、突貫工事の粗悪な建物群だったようで…。

これは日本の古い住宅写真。日本だって、戦後の物資不足の折、ぎりぎりの材料で何とか家を建てていた時代があり、その頃の物件はあまり長持ちしませんでした。仕方のないことですが…。あるいはバブル末期に、土地の高騰によって急激に建築コストの圧縮に迫られ、安普請なマンションが建てられた時期もありましたね…。建物の品質と時代って、割と関係あるってこと。(写真ACより)

大戦後の突貫工事で作られた団地は質が悪く
早くも1970年代には
当初の住人だった中産階級が
その郊外住宅地から流出していきます。

そして空き家の増えた街には
今度は移民の流入が起こります。
戦後の労働力不足解消のために、
スペインやポルトガル、アフリカ諸国からの
移民を受け入れる政策がとられていた影響も
あります。
今のフランス選挙の争点、移民問題にも関係する
都市開発史の一幕です。

2000年代フランスの
職のない移民の若者による全国的な暴動は
日本でも時折報道されていました。
車を燃やしたり、商店街を襲ったり
そんな映像を見たことがあるのでは
ないでしょうか。
今でも毎年大晦日の夜には、
フランス中の警察や機動隊が
暴動阻止の警備に当たらなければならない
状況が続いています。

(画像:Unsplashから)

住宅品質や街のコミュニティが
もう少し違った形であれば、何か違ったのか。
もちろんそれだけが問題ではないけれど。

日本の首都圏でも
空き家の増えた団地や住宅街があります。
これらをスラム化させない為の試みは
まだ始まったばかりです。

街や建物は、
ほっといても人がうまく住み継いでくれるってものじゃない。

こんなふうに、フランスでも
「人が住まなくなった街がどうなるか問題」が
起こっている訳ですが、
地続きで人が移動できる欧州の方が
島国の日本よりも
問題がダイナミックに表面化するように思います。

残したい建物。
住み続けたい街。
社会の資産になる建物や街。
負の遺産になってしまった建物や街。

マレ地区。
リノベーションで、残されていく歴史的建物。
移民の歴史から繋がる悲しい事件の為に
警官たちが立つ路地。

そんなものが
すぐ隣り合わせにある選挙中のパリでした。

今、震災復興に取り組む日本。うーん。

参考データ:厚生労働省 世界の厚生労働2010
(104pに、留学生の労働についても記載項目あり)

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