建国記念日。たぶん一生きけないこと。

日記
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春休みが終わり、今週から授業再開です。
今年のパリは
3月は初夏のような陽気だったのに
4月に入ったら秋冬のような寒さに逆戻りして
雨も多かった。
例年はこんな風じゃないのにねと
先生達が口々に言っていました。

パリの学校の休み明けは、
石造りの校舎が少しひんやりして少し寒い。
既に4月末ということもあり
学校のオイルヒーターの大元は切られているから
尚更、薄ら寒い。

今日、午後の授業の休憩時間に、
韓国の留学生の女の子が
(といっても年齢は30代かな?
 以前、娘がいると言っていたので…)
「寒いから温かいコーヒーでも買いにいこう」
と珍しく声をかけてきました。

フランスの自販機は、ボタンを押して、ちゃんと飲み物が出てきたらラッキー。

彼女は私よりフランス語が上手くて
授業中も、私のつたない会話練習の相手を
根気強くしてくれる、優しい人。
春学期が始まったばかりの頃に
冬期講習を既に受講済だった私が
パリカト校内の自販機の場所など
いそいそ教えてあげたりした程度で
それ以外は特に話したことのない相手だっのですが。

ちなみに、パリカトの自販機も
お金を入れて購入してみるまでは
正常に作動するか分からないという
フランス式でございますよ…。
小さいカップで50サンチーム。
(1ユーロの半分)
コーヒーやショコラショーが飲めます。

今日は何故か、彼女がショコラショーを
おごってくれようとしたので
私は「ダメダメ、ちゃんと自分の分は払うよ」
と言って、自分のぶんの
50サンチーム硬貨を彼女の手に渡しました。

ショコラショーを飲みながら
いろいろ二人でおしゃべりをしました。
私が先日授業でやった
「日本の耐震建築と地震について」の
プレゼンについてとか
「韓国のオンドルは暖かいけど
b実は毎日の手入れが大変」だとか
四方山を笑いながら話し…

温かい飲み物でおなかも温まり
休憩後の授業も無事終了、
その日もいつものように解散したのでした。

(画像:Unsplashから)

一人の帰り道、歩きながらぼんやり考える。
学生同士で、ノートの貸し借りの
お礼がある訳でもないのに、
50サンチームとはいえ
おごろうとするなんて珍しいよなあと。
だって、稼ぎのない留学生同士って分かってて
あんまりそんな事はしないから。

で、さっき、突然気づいてしまいました。

今日の授業の中で
各国からの留学生それぞれに
自国の建国記念日や建国の歴史について
プレゼンをする場面がありました。
(フランスだと革命記念日がこれにあたります)

日本については
神武天皇が即位した日が「建国記念日」だと
されているけど、それはただの伝説かも…
という話を日本人チームが説明。

その後、韓国チームからは
建国日といえる日はいくつかあって、
朝鮮戦争後に北朝鮮との分断により
今の韓国が出来たとする日や、
日本の占領から独立した日などがある…
という説明を、彼女がプレゼンしたのでした。

(画像:Unsplashから)

先生も「成る程ねー」と納得しつつ、
すぐ次のベトナムの留学生に話をすすめ
授業はいつも通りでした。
私も普段通り、ふむふむと相槌を打ちながら
彼女の目を見てプレゼンを聞いていました。

この学校、日本、韓国、北朝鮮、台湾ほか、
色んな国籍の学生が居ます。
歴史の話は時々でますし
でもお互い発言は自由で
私も勿論それで良いと思っています。

だから今日もプレゼンを聞きながら
私はいつも通りふむふむしてたし
自販機に一緒に行くときだって
いつも通りにこやかでした。
(基本的にスムーズに喋れなくても笑顔)
50サンチームを握り返したときだって
私は微笑んで、ありがとうって言った。

でもさ。
ひょっとしたら。
何か、あれは気遣いだったのかなって、
ちょっと思ってしまった。

(画像:Unsplashから)

日韓サッカーワールドカップから
もう10年近い。
韓流ブームとかK−POPとかJ−POPとか
エンターテイメント文化の交流はあれど
お互いの国民の間で、歴史認識等、
すれ違いがあるのは、双方分かってます。

私は普段、人としてその相手の
「ホントのところ」と付き合うことしか
考えていないので
国籍や人種のことは二の次で動いてます。
単細胞なのかもしれないけど。

彼女の授業のコメントだって
決して悪意でもなんでもなく
ただ冷静に普通に話してたって分かっているし、
他の日本チームのメンバーだって
みんな普通に聞いてた。

でも、ひょっとしたら、彼女は
「敵意はない」って
わざわざ伝えたかったのかもしれないと…。
夕ご飯作りながら、唐突に思っちゃった。
(なんでコーヒー飲みに誘ってくれたのが
 私だったのかはよくわからないけど)

だって、ホント「おごる」とか
普段はないことだから。

そう思った時、
「私、ひょっとしたらすごい
 ニブチンだったのか???」と
すっごい何度も自問して
一瞬、夕食の支度をしながら
一人でどっと汗をかいてしまったのでした。

(画像:Unsplashから)

だって、何も考えずに…
ニコニコしていたな、私。
一生懸命、休み明けの頭で、回らない口で、
フランス語を喋ろうとしてただけだ。
何も考えず。

今更彼女に
「まさか気を遣ってくれていたの」とは
もう聞けない。
これは私の思い過ごしかもしれないし。

それでも、ひょっとしたら、
あのショコラショーのお誘いに
そんな気持ちが少し込められていたのかと思うと
「気づかなくてごめんね」なのか
「ありがとう」なのかわからないけど
私の中にもいろんなものが混じった感情がわいて
同時に自分の鈍さ加減にほとほと呆れ果て、
もうその話を蒸し返すつもりはないけど
あと1ヶ月半は、週に1回、彼女と同じ授業に出るから…

次にまた会ったら、絶対微笑んで返すんだ!と。
こころに決めた休み明けなのでした。
鈍いって、切ない。

人生、誰だって、
たぶん一生言えないちいさな一言が、いっぱいある。

(画像:Unsplashから)

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