ブリュッセル旅行記③ マグリットという画家。

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ルネ・マグリットという
ベルギーの画家をご存知でしょうか?
今回は、2009年にブリュッセルで開館した
マグリット美術館に行ってきました。

マグリットに出会った頃、そして美術にちょっと興味を持ち始めた頃の思い出

私がまだ中学生だったころ、通っていた学校には、
戦争で焼け残ったという
古い木造のアトリエがありました。

歩くと床板が「きしきし」と音を立てるけれど
コンクリート建ての校舎の中とはちがう
柔らかな音の反響を持つ、その古いふるい建物が
私は何となく好きでした。

その建物は面白くて、
アトリエ内のある一室には、なんと木が1本、
部屋の真ん中に生えていました。

木が生えたところに、部屋を後から増築したのか、
気付いたら生えてきてしまったのか…。
そういえば、先生に聞くのを忘れていたな。

天井を突き抜けて立っていたその樹は、
夏の陽射しからも、この建物を守るくらいに
大きい木に育っていたような気がします。

戦争で空襲を受けて、火事になりかけたときは
地元の人や学校の皆が
バケツリレーの水をかけて守ったそう。

そんな愛すべきアトリエでしたが、
いまは耐震とか、防火とか、面積拡張とか、
木の根っこは建築基礎に悪影響だとか、
まあいろんな心配があったようで…
現在は取り壊されてしまい、
新しいコンクリ建築が出来ています。

私は何故か、新しくなったアトリエを
じっくり眺めた事がありません。
というより、眺めたくないのかも。
私の中では、あのボロボロのアトリエのままで
いいのだから。

さてその頃。
私は一応、美術部に在籍していたので、
時折放課後に、アトリエにあった
様々な画集を眺めていました。
そのなかで、忘れられない画家が
ベルギー人の「ルネ・マグリット」だったのです。

photo05.jpg
光の帝国 / The Empire of Lights

当時の私は、美術史など知らず、
シュルレアリズムなどというコトバも
よく判っていませんでした。

でも、よく見ると不思議なこの絵を、
ことのほか気に入っていました。

中学の美術の授業で、銅版画を掘った時には、
マグリットを真似た作品を作ったこともあります。
(やってみたかった)

その時の美術の先生は、版画の下絵をみて
「なんだこれ?」と言ったものですが(笑)
「マグリットだってこういうのを描いてるから!」
と反論して、そのまま完成させた記憶が有ります。
なつかしい。

img50f1afedzikazj.jpeg
光の帝国 2 / The Empire of Lights 2

例えば、上の作品。
背景は「昼」の空なのに、
手前の家のある通りは「夜」。
こんな風景ありそうだけど
実はちょっと不思議な絵になっている。

マグリットは、この「家」のシリーズを
いくつか描いています。

2009年、マグリット美術館がオープン

2009年、ブリュッセルの王立美術館の一角に、
新しく「マグリット美術館」が設立されました。

以前は、マグリットの暮らしたアパートあたりに、
彼の作品がまとめられていた程度だったらしい
のですが…。(なんてことだ)

数年前、この美術館設立の話を聞いた時、
「これはブリュッセルにぜひ行かねば」と
大いに一人で盛り上がったものです。

今回、念願かなって、
ようやくマグリット美術館を訪れる事ができました。

横浜美術館にもマグリットの作品があるので、
見にいった事はありますが、
本家本元マグリット「専門」美術館だなんて…
何がみられるか期待しちゃうじゃないですか。

入館に際しての手荷物制限は厳しめ

この日、美術館に入る際の警備が割と厳しくて、
パリの美術館では
一度も取り上げられた事がない程度の大きさの
斜めがけバッグまで、持ち込みはダメだといって
クロークに預けさせられました。

ナチスを批判するようなデザインの作品もあったので
その関係かもしれません。

謎めいた作品からは想像できない画家の姿

貫かれた時間/Time Transfixed

最初は広告デザイン等をしながら、
だんだんに画業に専念するようになった
マグリットですが、
同じシュルレアリストのダリなどとは違って
生活態度は本当にノーマル。

普通の背広を来て、幼なじみの妻と静かに暮らす。
規則的な生活を送り、
どうしてこの人がこんな不思議な絵を描いたのか、
という画家。

それぞれの絵のタイトルには、
哲学的な名前が付けられていますが、
私は名前にこだわらず、
ただ絵から漂ってくる味わいだけを存分にたのしみ、
展示を見て歩きました。

大変失礼な話ですが、
「ひょっとしたら哲学的なタイトルなんて、
 とりあえず後からつけただけで、
 本当は、マグリットは、
 アタマに浮かんだ描きたいものだけ描いてました
 …っていうのが本音だったらおもしろいのに」
なんて考えながら。

この画家については、
人物像等あまり詳しく掘り下げずに、
ただ絵を楽しむだけで30年すごしています。

中学時代に好きだったものは、大人になってもやっぱり好きだって話

それにしても、中学生の時に好きだった絵を、
今でも十分好きでいるなんて、
あの頃は考えもしなかったですね。

天井を樹にぶち抜かれた、
リアルにシュールなアトリエの建物の中で、
シュルレアリズム絵画とは知らずに、
その画集を眺めていた。

冗談みたいなホントの話。

そして。
時を超える「何か」を備えているもの。それが「ART」。

リスニング・ルーム / The Listening Room ミュージアムショップで、この青リンゴモチーフのグッズがいろいろあって、買って帰るか結構悩みました(欲しくなっちゃって)

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