フランス陶磁器を観るなら是非!セーブル国立陶芸美術館へ。

美術館・博物館
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焼き物の世界は難しそうだし、奥が深そうで、
自分には、なかなか近づけない。

そんな風に思っていたのですが…

フランスにいる間じゃないと
なかなか見られない品や情報だったら
今、徹底的に触れておいたほうがいい。

というわけで
今日はセーブル国立陶芸美術館を見学します!
メトロ9番線にのって、終点Pont de Sevres駅へ。

セーブルやマルモッタンのように、
パリ中心部から少し離れた美術館って
短期の観光旅行で来仏した時だと
なかなか足が伸ばせないものですよね。

だから、留学や長期滞在の時こそ、
一日思い切って
ここに時間を使うという贅沢ができる。
自分にとって代え難い価値のある、時間。

フランス大使館で使用する食器も、ここで作っています!

駅を出て、セーヌ川を渡る橋の向こうに
セーブル国立陶芸美術館が見えます。

かつては
パリ東側のヴァンセンヌに有った陶磁器工場が
こちら、セーブルに移転してきました。
今も、この美術館の後方に国営陶磁器工場があり
セーブル焼の生産を続けています。

現在も、世界中のフランス大使館で
セーブル焼の食器が使われ続けています。
古いものでも、デザイン図面や設計図が
きちんと保管されているので、
もし破損した際には再び、
完璧に同じデザインのものを作って
各大使館に届けられるようになっています。

さすがフランス国立工場。

ここで一つ、お得な情報を。
工場なので、時々、B級品セールがあるそうです。
素人目には、どこがB級なのか分からない程の品も
出るとのことなので、焼き物好きにはオススメですね。

日本語の説明ボードが嬉しい美術館

1階部分「陶磁器の歴史」フロアには、
英語、スペイン語、日本語の説明ボードが置いてあり、
それを読みながら、ゆっくり見学できます。

紀元前のエジプト、ギリシャなどから始まり、
南米、アフリカ、アジア、欧州まで、
まさに世界中の焼き物が展示されています。

東洋展示室、「西洋からみた」アジア各国の陶磁器紹介が面白い

茶道経験者なら、1階のアジアの展示室で
日本、韓国、中国と、
国ごとの陶磁器の個性を比べてみてもよし。

不完全な姿に侘び寂びの美を見出した日本。
文字を陶磁器に書いた韓国、その独特な色あい。
そして景徳鎮をはじめとした中国の磁器。

ちなみに、この「景徳鎮」のアルファベ表記、
“Jingdezhen”って書いてあって…
日本語ボードが無かったらさっぱり分からなかった。

中国や韓国など、我々日本人が漢字で認識している
地名や固有名詞のフランス語表記って、
ほぼ理解できないと言っていい。(海外あるある)

セーブルの日本語説明ボード作ってくださった方、
本当にありがとうございます…
(ルーブルにも無いもんね)

セーブルの館内案内マップ、焼き物用語の定義解説がわかりやすい!

2階に上がって、日本語ボードが無い展示室では、
電子辞書を引きながら見学してみました。

しかし、海外博物館見学にありがちなのですが、
電子辞書だと、専門用語の解説がないので
ほとんど意味がわからない…(そりゃそうだよね)

そこで!
参考になったのが、
セーブルの「館内案内マップ」に載っていた
焼き物用語の「定義」ミニ解説です!
(仏語と英語表記のみですが…)

仏語か英語がある程度わかる方には
とても役立ちますので、是非ご利用ください!

西洋陶磁器 かんたん基礎知識!

上記のマップから学べることを、ちょっとご紹介。
これがわかれば、あなたの陶磁器鑑賞が
一味深まるかも。

焼成温度による区分け

セラミック(Ceramique)とは、
粘土を成形して焼いたもののこと。
だから、ここ la Citè de la ceramique では
焼き物全般を扱っている…ということ。

セラミックには、大きく分けて2つあり、
 1.多孔質で水を通すものと、
 2.ガラス化していて水を通さないもの

があります。

【1.多孔質なものといえば…】
◆テラコッタ Terre Cuite または Poterie 
一般にグレーから赤等の色をした、多孔質の焼き物。
700℃から1150℃で焼く。

◆ファイアンス Faiance
これも多孔質な焼き物だけれど、
釉薬をかけて水を通さなくしたもの。
900℃から1150℃で焼く。

【2.ガラス化する方は…】
せっ器(炉器) Gres
シリカ等を多く含んだ土を焼いたもので、
気孔性がなく、水を通さない。
1200℃から1300℃で焼く。

磁器 Porcelaine
これも水を通さない焼き物。
白く、半透明で、はじくと高い音がする。
カオリンが含まれた土を用いたり、
透明の釉薬をかけて作る。
1200℃以上で焼く。

材料の土による区分け

上記の四つの区分け(単語)とあわせて
★軟質磁器 Porcelaine tendre
★硬質磁器 Porcelaine dure

の違いが判れば、ざっくりですが
陶磁器の展示を楽しめると思います。

軟質磁器は、カオリン(長石)を含まない土で
作ります。
1200度位の比較的低い温度で焼くのですが、
現代の私達は、食器としてはまず使わない。

というのは、表面が柔らかく、この皿の上で
ナイフでぎしぎし肉を切って食べるのは無理。
熱い飲み物をいれるのも難しい。

それでも、軟質磁器でないと出せない
セレストといわれる青や
アントワネットが好んだというピンク等
美しい色彩が愛された焼き物です。
この「色」の為に、作り続けられた
焼き物ってこと。

一方、硬質磁器は、カオリンを含む土で作られ、
1300度以上のちょっと高めの温度で焼成します。

こちらは、皿の上で肉を切ったり、
カップに熱い飲み物を入れたりしても
問題なく使えるので、私たちが普段使っている
磁器はこちらだと思えばわかりやすいかも。
紺色の出方など、軟質磁器とちょっと違いますね。

以上、6つのコトバだけわかれば割と楽しい、
西洋陶磁器かんたん豆知識のご紹介でした。

人が日常で使える美術工芸品。陶磁器の面白さ

歴史上、人類は
王朝文化や貴族文化などに支えられながら
ただ単に、日常に便利な陶磁器を造るだけではなく
美しいもの、文化的なものを、追求してきました。

富の集積があったおかげで、
複雑な社会制度や格差が生まれたけれど、
人間がより深い芸術性を追求できる
余力ももたらされた、ってことか。

セーブル。人類の精神の素敵な余力を感じられる、
そんな美術館でした。

現代の我々は、素敵な余力を持てているか?

東京でよく見られるような、
その時代の、小金持ち達が思いつくような
コンテンツばかりが
新しい街の中に組み込まれる文化的貧しさは
全くもって御免こうむりたいが、
(そして大抵は、小金を落とさせる仕組みばかり)
富の集積が有ってこそ、成立するコトもある。

日本に帰ったら
ちゃんと自国の陶磁器を、見ておかなくては。

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