ルーブル美術館を、ついに全館踏破した話。

フランス社会・街並み・建築
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この度、ルーブル踏破、完遂いたしました!
年間パスポートで、ちょっとずつ通い続けて
館内案内図を塗りぶしてまわり笑
これで全館回りきれたはず!広かった…

現在オープンしていて、入れる展示室は、全て見学。
例えば今は、サモトラケのニケのあった辺りは
工事中ですし、定期的に通っていると
ルーブル内部で閉鎖箇所が少しずつ変わっていくのが
判りました。

というわけで今回は
踏破に至るまでのルーブル美術館小話を。

ルーブル見学は、ある意味、その日の運次第。

なにせここはフランスですから、
ストで全館クローズしてることもあるでしょう。
(まだ私はストには遭遇していないけど)

あるいは見たかった部屋が、そこだけ
当日いきなり予告無し
閉まってることだってあります。

この間はイスラム展示室がクローズでした…
朝からオリエンタル気分を盛り上げて行ったのに…

だから「今日はここを見よう!」なんて思っても
HPに案内もなく閉まってるので、本当に運次第です。
基本的な展示替えは大抵火曜日にやっていますが、
それだけでは足りない展示替えもあるってこと
なのでしょう。

まあ…ちょっとくらい閉まっている部屋があっても
見る価値のあるものが
他にも山ほど有るルーブルだから、いいのか。

ナイター見学も、おすすめです。

ルーブルでは、水曜と金曜の夜18時から
ナイター開館をしています。
場所によっては結構すいてて、ゆっくり見学できます。
座り込んで、彫刻のデッサンや絵画の模写をしている
人たちもいました。(許可が要ると思われますが)
◾️2023年1月現在、ナイター開館は金曜日のみで
 21:45まで。(20:45最終入場)

ナイターといえば…、
誰もいなくなったエジプト展示室というのも、
しーんとしていて、味わい深い。
何たってミイラと二人っきりだ。
思わず一人で「…お邪魔します…」って挨拶した程。
(ある意味コワい)

ミイラ好きの人は、ぜひナイターへ!

そうそう、ルーブルのナイターでは
全ての部屋がオープンしている訳ではありません。
大きな展示室の横にある、小さな部屋なんかが
クローズされている場合があります。

それと何故か、電気がついてない部屋も…。

おもしろかったのは、電気の点かない薄暗い中に
派手好き王、ルイ14世の金ぴかアイテムがならぶ
豪華な「アポロンの間」を歩いた時のこと。

かつてまだフランスに電気というものがなく
蝋燭だけで灯りをともした時代の宮廷の夕暮れは、
きっとこんな感じだったのだろう…。

勿論、今のルーブルで蝋燭は使っていないのですが…
想像力で、時間旅行ができそう。

流石に暗くて、展示品はよく見えないけど(笑)
その雰囲気は、格別でした。

ルーブルには、時々「今」が混じってる。

現在、レディー・ガガの映像アート「マラーの死」が
展示中。右下の、青いパネル画面がそれです。

浴槽に横たわるマラーに扮する、レディー・ガガ

ここは、19世紀に流行した歴史画が並ぶスペース。
そこに、レディー・ガガ。
でも、そんなに違和感ないかも…面白いですね。

向かいの壁には、ドラクロワ作の
「オフィーリアの死」が展示中。
殉教し湖面に横たわる、オフィーリアの姿。

ルーブルには、モアイもいる。

ぼくもいるよ!

なんとモアイ!
パリの真ん中にモアイだよ!
ホンモノだよ!

イースター島にいかなきゃ
一生見られないと思ってたよ!

感動して、記念写真取る人、多数。
「オー!モアーイ!」とかいってみんな大喜び(笑)
人類共通のミステリーか。

開いてたり開いてなかったりする門がある。

ルーブルの南東端、ポルト デ リオン。
この入り口、開門時間帯でも閉まってる場合があり
穴場だけれど運次第のエントランス。(テキトーな)

写真左端にリオン(ライオン)の彫刻が見えています。綺麗な場所なんですよね

ポルトデリオンから入るとすぐの展示室は、
他の部屋と少し違う、現代的な空間。

映像資料を見られるブースも。

このエリアは
ガイドブック等にもあまり載っていないので、
ここの作品をいくつか写真でご紹介します。

アフリカ・アジア・オセアニア・アメリカ美術部

15〜16世紀の、象牙の彫刻。

広角で無理にアップにしたからピントがあってない。でも見事な作品です

シエラレオネのもの。

それからこちらは、18〜19世紀の彫刻。
木の台に、巨大なクギが一面にうちこまれて、
ハリネズミみたいになってる。

コンゴの作品。

そして、私がここで一番美しいと思った、石の彫刻。
ヘビが丸まった姿なのですが、表情もすばらしい。

コロンとしたフォルムがかわいいへびたろう…うちにほしい…

アステカの作品。何かの守り神様かな。

これらがある展示室は、ルーブルの
アフリカ・アジア・オセアニア・アメリカ美術部です。
(日本を含む極東アジアの作品はありませんでした。)

現在はケ・ブランリー美術館に
殆どの作品が行ってしまったものの、
こうしてルーブルにも
いくつか素敵な作品が残されています。
(展示替えあり)

シエラレオネなんて、今その国名を聞くと
ひどい内戦が続き
夢も希望もかつて一度潰えたかに思えるけれど、
15世紀に、こんなに素晴らしい彫刻があったのね。

コンゴだって、今は汚職まみれの
絶望的な政府になってしまっているのに、
かつて、こんなにユーモラスで楽しげな
彫刻をつくろうという人々のスピリットがあったのだ。

アステカは、ヨーロッパによって滅ぼされて
もう居ない人たちが彫ったこのヘビだけど、
これが日本の水神様みたいに見えて
理由も無く「懐かしい」気分になる。

美しいものって、時代も民族も関係ない。
作者の名前も無しに、こうして作品だけ、残ってる。

かつて冷遇された美術品が、今のルーブルに展示されている意味とは

ルーブルを広角レンズで横いっぱいに撮る

シラク大統領の頃、
それまでかなり軽蔑的な扱いを受けていた
これらの美術品をルーブルに入れようと、
フランスの知識層やアーティストが
運動を起こしました。

これが1990年代の話だから
実は結構最近のことなんですよね。

新聞「リベラシオン」に、
総勢300人程がこうした意見を訴える記事がでる等、
様々な活動の結果として、
ようやくこれらが「美術品」として
「ルーブル」に入った。

なんと、これが西暦2000年の話。
割と最近だ。
どうりで展示室が妙に新しいわけだ。

これは、フランス美術界にとって
大きな意味のある話だった。

ケ・ブランリーもできたのに、
わざわざルーブルに、
何故こうして少し作品を残しているのか?と
いぶかしむ人もいるらしい。

パリの美術館の時間軸としては、
「ルーブルは印象派まで」
「オルセーは印象派以降」
「ポンピドーは現代美術」

こういう分類が出来ている。

その時間軸の中に、大陸を問わず、
全ての人類が生み出した美しいものを
受け入れることを決めた、意志の表現として
かつての激しい蔑視をふまえ、
一段階乗り越えた歴史を
ここに一部残す意味があるんじゃないかな、と。

西洋美術の素晴らしいものも
本当にたくさんあるルーブルだけど…。

ルーブル完全踏破した日には、
そんなことも、 ちょっと考えたのでした。

ルーブル全体模型(これも美術館内に展示されていました)

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